映画「君の名は。」で異例の大ヒットを起こし、一躍時の人となった新海誠監督が3年ぶりに制作した新作「天気の子」。
君の名は。を期待値MAXで観て、全然楽しめなかった勢の筆者ですが、ここまで盛り上がっている作品を見逃すわけにはいくまいと早速観てきました。
結論、君の名は。よりも面白かったし、普通に良い作品だな、と思いました。細かいところはやっぱり苦手でしたが。。。作品の根底にあるメッセージに救われてしまった。
正直終盤までは「やっぱり全体的に苦手だな〜このまま終わる感じかな〜」と思っていましたが、終盤に圭介が放った一言で評価がドカッと上がりました。あの一言は本当目からうろこが落ちた。
今作を筆者なりに一言で表すなら「迷える現代人への応援歌」です。
ということで、この記事では新海作品を「君の名は。」しか観ていない上にあまり楽しめなかった勢の目線から「天気の子」の感想や考察を書いていきます。
点数:65/100点
天気の子の基本情報
- 監督・原作・脚本:新海誠
- 製作:市川南・川口典孝
- 企画・プロデュース:川村元気
- 音楽:RADWIMPS
- 主題歌:RADWIMPS・三浦透子
- 製作年:2019年
- 製作国:日本
- 配給:東宝
- 上映時間:114分
2016年に異例のヒットを記録した「君の名は。」の新海誠監督の3年ぶりとなるアニメーション映画新作。
今作も君の名は。に引き続きRADWIMPSとタッグを組み、PV然とした演出が繰り広げられる!
天気の子のあらすじ
高校1年生の夏、帆高は離島から逃げ出して東京に行くが、暮らしに困ってうさんくさいオカルト雑誌のライターの仕事を見つける。雨が降り続くある日、帆高は弟と二人で生活している陽菜という不思議な能力を持つ少女と出会う
出典:シネマトゥデイ
天気の子の登場人物/キャスト
- 醍醐虎汰朗:森嶋帆高
- 森七菜:天野陽菜
- 本田翼:夏美
- 吉柳咲良:天野凪
- 平泉成:安井
- 梶裕貴:高井
- 倍賞千恵子:立花冨美
- 小栗旬:須賀圭介
サプライズであんな人やこんな人の登場!!……もあるのか!?
本田翼さんは普通に上手でした。
もっと言うと事前情報を全く入れずに望んだので、エンドロールまで誰が声を入れているのかわかりませんでした。
天気の子の感想【ネタバレあり】
改めてですが「君の名は。」よりも「天気の子」の方が圧倒的に面白いと思いました。
それでも作風というか全体のトーンは苦手なんですけど、普通に良い作品だと思いました。期待値めちゃくちゃ低かったから、というのあるかもしれません。
君の名は。は予告をみた時点で苦手なやつということを確信したんですけど「それでも感動させてくれるんでしょう?」みたいな感じで割と期待値高めで見に行ったんですよね。
それで見事に裏切られたんですけど。
そういうこともあって今作は期待値低めで観た結果「思っていたよりよかった」という感想に落ち着きました。
以下から完全にネタバレしていきます。
愛が語られ尽くした世界で新海誠が投じたのは身も蓋もない、ストレートなメッセージだった
突然結末のネタバレからで恐縮ですが、一番刺さったシーンだったので。
変わり果てた東京に帰ってきた帆高。「世界を狂わしてしまった」という後悔の念を抱きながら圭介のもとを訪れると、彼は帆高にこう言いました。
「自惚れるな。お前たちが世界の形を変えたなんて思い上がるんじゃねぇ。
もともと世界は狂っている」。
「天気の子」という作品はこの言葉と帆高の行動に全てが詰まっていたと思います。
「世界はもともと狂っている」。
あの言葉を聞いた時にすごくスカッとした自分がいました。
この言葉を聞いた時に天気の子という作品が伝えたかったことは「もっと自分勝手に生きればええんやで」ということだったんだなぁと確信しました。
この点にいい意味で新海誠さんの開き直りを感じたんですよね。
筆者が君の名は。を鑑賞した後に感じた印象は率直に言うと「溢れ出る童貞感」で。
さらに嫌味ったらしい言い方をすると「陰キャラが全力で男女のキラキラした物語を作った結果」が君の名は。みたいな。
こういった理由で、めちゃくちゃ失礼なのは承知で新海さんはわりと陰キャ寄りの人だと推し量っていました。
その新海さんが天気の子で伝えようとしたメッセージは「お前の好きにやればいい(=もっと自由に生きろ)」だった。
全くもって身も蓋もない、カラッとした快晴の青空のようなメッセージ。
「世界は狂っている」という言葉を聞いたとき「新海さんがこんなことを言わせるとは…!」と衝撃を受けました。
改めてクライマックスシーンをを振り返ると、主人公の帆高はヒロインの陽菜を救うために世界の崩壊を選びました(これ自体がミスリードの可能性もあり、それも巧い)。
崩壊した世界を目の当たりにした帆高は自身の選択に少なからず後悔の念を感じている。その帆高に向かって圭介が言うわけですね。「世界はもともと狂っている」と。
“世界はもともと狂っているんだからあなたの選択1つでどうこうなることはない。だから好き勝手やればいい”
筆者はそんなメッセージが詰まっていると解釈しました。
その言葉を受け、帆高は「世界は最初から狂っていたわけじゃない(=自分たちが壊した)」と一度は否定します。
しかし、陽菜と再開できた時に彼が紡いだ言葉は「大丈夫だ!」でした。そう。大丈夫なんですよ。自分にとっての大丈夫を探して、生きていればそれでいいんです。
世界の変化を受け入れて、その中で毅然と、自由に好きに生きていけばそれでいい。息苦しさは自分で壊せる。
天気の子は今に息苦しさを感じる現代人への、彼なりの応援歌でした。
君の名は。と似ているようで異なる構図
物語の大筋だけみたらもうほとんど君の名は。と同じなんですよねこれ。
偶然の出会い→お別れ→再開→仲良くなる→いろいろあってお別れ→歳月が流れる→再開 みたいな。セカイ系というやつですね。
それでも天気の子と君の名は。は決定的に違うポイントがあって、個人的にはそれも好印象でした。
というのも天気の子はどこまでも主人公の自分本位に物語が進んでいくんですよね。自ら選択して、答えを掴み取っていく。
主人公がヒロインを取り戻すために、そのために全てを投げ出して突き進んでいく。その選択がたとえ世界のバランスを壊すものだったとしても。
一方で君の名は。は世界を救う物語だった。世界を救うために奔走した。愛を犠牲にしても。
天気の子はどこまでも自己中心的で青くて、「なんだこのクソガキは」みたいに感じる人もいたかもしれません。筆者もあの言葉がなければそう思っていたかもしれない。でもあの言葉が拓いてくれた。
君の名は。は偶然に身を任せてその中での最適解を選びにいったけど、天気の子は自ら選び取りに行ったのがよかったですね。
「世界はもともと狂っていた」。だから自分勝手にやればいい。どうしようもないくらい身も蓋もなくて、でも核心を突いていた言葉だと思う。
これまでセカイ系のプロットで主流だったのは「セカイもあなたもどちらも救う」でしたが、天気の子はその流れをぶった切り、この上なく現代に適ったアンサーを出してきたように感じました。
RADWIMPSとのコラボは無理やり入れなくていいでしょ感しかないけど、主題歌はよかった
RADWIMPSと新たに加わった女性Voの挿入歌は「タイミングそこ!?」みたいなところが多くて失笑だったけど、主題歌の「愛にできることはなにかあるかい」だけはすごく良かった。
「愛が語られ尽くしたこの世界で何ができるのか」。今まで恋愛をテーマにした作品を作ってきた人間が主題歌でそれを語らせる。並々ならぬ思いがあったと思います。
それでも「まだできることはある」という表明がかっこよかった。
他の曲の記憶はまったくありません。なんか多かったのは覚えている。
とはいえ薄ら寒い演出は健在だしきつい部分はある
それでもやっぱり全体的なトーンは苦手。
女性性を意識させる演出は気持ち悪いし、歌とともに生活を早回しで描いていくのは「それわざわざ映画でやることか」と思うし、説明口調が多いくせに重要な点についてはそこまで触れないところとか……。どこか違和感があるんですけどこれはもう相性ですね多分。仕方ない。
そんでもってなんやかんやで恋愛を神格化しているような感じは否めず。
今どき「どこ見てんのよ!」とかやる?「陽菜さんを見ていた」という言葉とリンクさせたかったのだろうけどそれにしても寒い。
全体の情景とか花火のアニメーションはすごく綺麗でそれはすごい。素直にすごい。新宿で見れば鑑賞後にすぐに聖地巡礼できるコスパも最高。
天気の子の考察・疑問点・君の名は。との関係
天気の子の考察と疑問点など。
異常気象は本当に陽菜のせいだったのか
天気の子においてとても重要な論点がこれだと思っていて。
筆者は「どちらとも言えない」という解釈に落ち着きました。100%彼女のせいにすることはできないって感じです。意図的にそうしていると思う。
- 「そもそも現状が本当に異常気象なのか」
- 「元々海だった東京を天気が元に戻そうとしている」
- 「もともと世界は狂っている」
こういった言葉をもって、割と周到に彼女一人が原因ではないという理由が用意されているんですよね。だからこそ好きに生きればいいというメッセージにもつながってくる。
ここらへんの話の組み立て方はすごくうまいなと思いました。
完全に推測だけども、今作は「もっと自由に好き勝手に生きてください」という伝えたいメッセージから逆算した結果、天気をテーマに選んだのでは?とも思っています。
良くも悪くも天気ほど我々の身近にあって、かつ不確実でご都合でなんとでも語れるお題はないから。
君の名は。のキャラが割と主張してきた件
出ても瀧か三葉がチラッと出てくる程度だと思っていたんだけど、割とガッツリめにでてきて笑った。以下登場シーンです。
瀧くんの登場シーン:お天気ビジネスのクライアント
天気ビジネスのクライアントとして登場。三葉の祖母の立花富実の孫として登場します。帆高と仲良くよろしくやっていてスイカまで出してくれました。出演長かったです。
三葉の登場シーン:ルミネ新宿の店員
瀧くんと終わりかと思いきや、三葉も登場。帆高が陽菜へのプレゼントを購入する時のルミネの店員役で登場しました。
帆高の「これ、喜んでくれますかね」という脳みそ空っぽの質問に対し、「喜んでくれるよ。あんなに悩んで頑張って選んだんだから」。と優しすぎる回答を返していました。名札に「MITSUHA」と書いてありましたね。
話ずれるけど帆高くんはバカのひとつ覚えでYahoo知恵袋を使い続けるの何なの?馬鹿なの?大人の都合ですかわかりました。
テッシーとサヤちんも登場していたらしいが見つけられず
エンドロールで成田凌らの名前があったのでテッシーたちも登場していたっぽいですが、筆者は見つけられず。見かけた方はラッキー!
花澤香菜さんはほぼ本名で登場
君の名は。のキャラではありませんが。。
新海誠さんが大好きで毎作声優として出演している花澤香菜さん。天気の子ではほぼ本名で出演していて草でした。今作はイケメン弟に恋する園児の役でした。
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ファフロッキーズはなんだったのか:「その場にあるはずのないもの」が空から降ってくる現象
完全にウィキペディアからの引用ですが。
途中、水の形状をした魚が度々現れて、ファフロッキーズ現象という単語がでていましたが、あれは「その場にあるはずのないもの」が空から降ってくる現象のことを指すみたいです。
ファフロツキーズは、その場にあるはずのないものが無数に降り注ぐ現象を指す用語である。飛行機からの散布や竜巻による飛来など原因が判明しているものを除き、「なぜ降ってきたのか分からない」ものを指す
出典:Wikipedia
Wikipediaのページで「シンガポールで魚の雨が降った光景」が描かれた絵が掲載されていました。
帆高はなぜ家出していたのか
閉鎖感を感じたのはわかった。でももう家族間の関係とかも少し掘り下げてほしかったなぁ……と思いました。
君の名は。もそうだったけど、全体的にバックグラウンドの説明が弱いよね。
帆高の顔の傷の意味
陽菜を取り戻そうと電車の車線を激走する帆高くんの顔の傷の位置が上京してくる時に絆創膏を貼っている位置と同じだったのはなにか意味があったのかしら(わからない)。
それにしてもすごいスタミナだった。
帆高が読んでいた本:なぜキャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)なのか
明らかに意識して「ほらここ!帆高が読んでいるのはキャッチャー・イン・ザ・ライだよ!!」とこれみよがしにアピールしてきてたけど、意味はわかりませんでした。
この本です。割と有名なやつですよね。
副題(英題)のダブルミーニングは見事
今作の副題は「Wheathering with you」。
直感で「天気やな」と理解できますが、weatherの意味を調べてみると巧妙なダブルミーニングが仕込まれていることがわかります。
というのもweatherは名詞では天気という意味ですが、動詞の意味にすると
- 〈…を〉風雨にあてる,外気にさらす; 干す.
- 〈あらし・困難などを〉切り抜ける,しのぐ.
- 【地質】〈岩石などを〉風化させる 《★通例受身で用いる》.
出典:weblio
という意味もあるんですね。
この中の2「(困難などを)切り抜ける」という意味が天気の子の物語にもバッチリはまると思いませんか?
困難を切り抜けて、陽菜を救い、そして変わってしまった世界を受け入れて陽菜と生きていくことを選択する(with you)。
weatherという言葉に動詞的用法があったのも驚きでしたが、まさかこんなダブルミーニングが仕込まれているとは。これはオサレと言わざるを得ません。上手い。
続いてサブタイトルとなった「Weathering With You」について、新海は「『Weather』という気象を表す言葉を使いたくて。これには嵐とか風雪とか、何か困難を乗り越えるという意味も含まれるんです。映画は何か大きなものを乗り越える物語でもあるので付けました」と語った。
出典:ナタリー「新海誠、新作「天気の子」企画のヒントは真夏に見上げた積乱雲」
こちらの記事で監督自ら言及されてました。
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天気の子の感想まとめ/君の名は。が苦手な筆者でも楽しめた
「君の名は」。と比べてんばかりでしたが、いい意味で前作から吹っ切れているように感じて好感がもてました。
いわゆる「世界かあなたかどちらを取るか」的な物語はたくさんありますが、
世界を犠牲にするという選択をとった時点で珍しいし、その上で「世界はすでに狂っているのであなたの選択がおかしいわけではない」。
だから自らの意志で選べばいいというアプローチで選択を正当化するのはとても現代社会に適っていると思いました。
なにを信じて、なにを選べばいいのかわからないこの時代で、自ら選択して選び取っていく。それはとても難しいこと。
迷ったらこうやって考えればいい。「世界はもともと狂っている」。
天気の子は新海誠監督からの、迷える我々へのエールでした。
★他の「天気の子」の感想記事一覧
↑帆高がキャッチャー・イン・ザ・ライを持ち歩いていた理由はこちらの記事に詳しく書いてありました。
コメント
今作では家出の理由や陽菜の家庭状況等、描写不足過ぎる部分が数え切れぬほど存在しています。もちろん主人公(社会を知らぬ子)と須賀(社会を知り、常識に囚われた者)との対比なり、伝えようとしていることはしっかりと存在してはいました。ただ矛盾や突っ込みどころ、また物語の緩急に描写の丁寧さを見れば『君の名は』の方がはるかに出来はよく、完成しているというのが実際の所です。
あなた様の書かれた全文を読まして頂いたところ、矛盾点や描写不足等には気づいているものの評価は今作が上となっており、また評価している点の理由が余りにも自己による感情からです。それらを踏まえ、あなた様は物語やテーマを見ようとしているのではなく、単純に自身にかけて貰いたい言葉や、自身の現状を肯定するようなモノを見たいだけに思えました。
君の名は。も天気の子もどっちも好きな立場(わずかに天気の子)で言わせてもらうと、君の名は。の方が矛盾や突っ込みどころは多かったですよ。
そもそも新海監督に緻密な世界観を求めるところがナンセンスだと思っていて、そう言った矛盾や突っ込みどころが些末に見えるくらいの演出力が新海監督のウリだと思っています。
天気の子で言えば、最後のシーン。
元に戻っただけ、最初から狂ってる、そんな言い訳で観客を納得させようとしてるのかと思いきや、全部ぶん投げて「全部自分で選んだんだ!」と主人公とヒロインに責任を背負わせた演出は神懸かってますね。
ブログ主さんの言う通り、自分たちで選んだからこそ心揺さぶられるものがあるのだなと。
なんで自分が天気の子の方が面白いと思ったのかこのブログを読んでわかった気がします。
そうなんでしょうか……。かなり決定的な部分でズレてるんじゃないかなって思っちゃいました。
私の解釈は違います。
帆高は東京水没後、すぐに田舎に戻っています。ですから東京の惨状と陽菜が(おそらく毎日)祈っている光景を目の当たりにしたわけではないのでしょう。
だから、確信が持てなかった。
「世界はもともと狂ってる」
その言葉に引き寄せられてしまうほどに、自らの選択が一体どういうことなのか理解していなかった。
ラストシーンで、帆高は「そうなのかな……世界がもともと狂っていたのかな……」と思いつつ歩いていきます。
ですが、ついに水没した東京を前に祈っていた陽菜を目の当たりにして彼は確かこう言ったと思います。
「違う! あの日、僕たちは世界を変えたんだ。僕は選んだんだ! あの人を! この世界を! ここで生きて行くことを!」
世界がもともと狂っていたんじゃなくて、僕たちが選んだ。この破壊を。この結末を。それを一人で背負わせた。何よりも最愛な彼女に。だから今度は僕も背負いたい。大丈夫だと言いたい。
これがラストシーンの彼の気持ちだと思います。
ここで、Radの『大丈夫』の歌詞が活きてくるのだと思います。
「世界が君の小さな肩に乗っているのが僕にだけは見えて泣き出しそうでいると、大丈夫?ってさ、君が言うからさ、大丈夫って僕は慌てて言うけど、なんでそんなこと言うんだよ。崩れそうなのは君なのに」
「君の大丈夫になりたい」
世界を決定的に変えてしまった。それを二人で背負って生きていこう。Weatheringとはきっとこういうことなのだろうと。「世界はもともと狂っていた」なんて大人の飲み会での愚痴みたいなこと、彼は受け入れません。そういう老婆心を蹴飛ばすところに、若者の感性があるんだと思います。
正直帆高の東京を水没させたことに対する鈍感さには少し思うところがあるのですが、それでも『世界の調和をたとえ乱して、世界中から背を向けられても、それでも二人で生きていこう』とい帆高の決意には、胸を動かされました。
私もそう思います。
世界はすでに狂っているのであなたの選択がおかしいわけではない(だから大丈夫)なのではなく、
世界を狂わせる選択をしてしまったけどその罪や責任を二人でなら背負って生きていける(だから大丈夫)、
というのがあのシーンが描いていることだと思います。
開き直りではなくて覚悟ですよね。
童貞感とやらで言えば君の名は以上だと思います。
「ライ麦畑でつかまえて」は不実な大人の世界に反発する少年の家出物語なので、帆高の鬱屈を間接的に描写するため、意図的に強調されていたのではないでしょうか
三葉の名札に書いてあったのはMITUHAじゃなくてMiyamizuだぞー結構どうでもいいけど。
考察や解釈は色々な見方があるので言及しませんが…
三葉のプレートに書かれていたのは、「Mitsuha」ではなく「Miyamizu」です!
くだらないところですが、そこだけ…。