パーイを無事15:30に出発したバン。
パーイ〜チェンマイ間3時間の移動は、助手席という当たり席を手に入れたのも助かり(残り物には福がある‼︎‼︎)、快適な移動であった。運転手さんのテクニックに舌をまく場面もしばしば。
18:30チェンマイ着。降ろされたのは身の前に城壁らしき何か、右手にスタバというなかなかの都会街であった。
ここで待ってればピックアップされるのか?と思い10分ほどぼーっとしていると、同乗していた人が一人もいなくなっていた。どういうことだ。昨日渡されたチケットを見やると、なんとか状況を飲み込むことができた。
ふむふむ、どうやらチェンマイにもアヤサービスの支社?があるみたいで、ここでピックアップしてもらうみたいだ。あと1時間。。。
ネットはないので、maps.meを開く。オフライン下でも、場所の検索まで出来てしまう。すごいぞ、maps.me
検索結果を見て、しばし唖然とする。徒歩で40分。こんな鬼畜なとこに下ろすとは何事だアヤサービス。トゥクトゥクを捕まえる。値段を聞く。「100バーツ」ぼくは交渉を諦めた。自らの足を信じることにした。
結果、19:25に着いた。道中500匹はいるのではないかという小鳥の大合唱にメンタルをやられながらも、なんとかたどり着く。
ヘロヘロだ、ミイラだ。形容するのも面倒なくらい、疲れた。
再びミニバンで移動だ。隣にはワケありそうだけど人の良さそうな、日本人のおっちゃん。しかし、この広い世界で、同じ言語を主として操る人物と巡り会えた喜びよりも、この疲労にさらに追い込みをかける絶望がこのバンにはあった。
臭い。よくわからんが滅茶苦茶臭い。なんだこの臭い。様々なスパイスが腐って(香辛料は腐る夢を見るのだろうか)刺激が求めてない方向に向かってしまったかのような臭い。当初は前列に座る欧米人女性3人組がウエスタンに、節操なく、ボリボリと陽気なメロディを奏でて食べている三種類のフレーバーのポテトチップスによる異臭と推測した。なので彼女らがその封を閉じるまで、鼻を塞ぐ作戦に出た。必殺、ノーズフィンガーアポカリプスだ。
その時だ。隣のおっちゃんが「日本人ですか」と声をかけてきたのは。おいおい、声を発したら臭いを知覚しなければならないだろう‥‥。と思いながらも、久々に日本語を他者の放つ音として聴くことができたのが新鮮でしばし応じる。ぼくはてっきり中華系の方だと思っていたが、山口出身の方でもう3年近く日本には帰っていないらしい。時折非常に痛そうに胸を押さえ、顔をしかめるおっちゃん。するとおっちゃんは今肋骨あたりが折れておりまして‥‥と誇飾なく言うではないか。繰り返すがぼくはもうヘロヘロで(ほとんどバンに乗っていただけの若者が何を言うかという申し出は帰国してから受け付けます)それを聞いたぼくはただでさえ億劫だった(おっちゃんすまんきっと今だけだ)おっちゃんとの会話に興味が完全に失せてしまった。ここが日常のワンシーンであるか、健全であるか、乗り継ぎが40分の徒歩を要するものではないか、若しくは現在揺られているバンに異臭か漂っていないかのいずれかの要件を満たしていれば、ぼくは意気揚々に「えぇ!?!?大丈夫ですか!?いや、え、でもどうして‥病院には!?」とマシンガンクエスチョンを繰り出していたものだろうが、それを聞いたぼくのリアクションとしては「ぇ‥大丈夫ですか‥(今にも切れかねないか細い声)」だった。いや確かに、この狭いミニバンの中で声を荒げてリアクションすることはなかったにしても、その反応はぼくにしては落ち着きすぎていた。まるで初期の綾波レイだ。彼女なら「‥‥そう」とだけ返していたことに違いない。
興味、会話の気力を喪失したぼくをよそに、おっちゃんの自己開示はもう少し続いた。先の通り、日本にはもう3年帰っておらず、定職もなく、貯金を切り崩して生きているらしい。タイとラオスを往復する日々、いわゆるビザ難民と自嘲していた。笑っていいのかこれ。ビザ難民については詳しく記述する気力もないので気になったら各自調べてほしい。
極め付けだ。おっちゃんは「親にも帰ってこなくていいと言われてまして‥‥ハハハ‥‥」と笑っていた。ラーメンの汁を飲み干したと思い器をおくと、わずーかに残っているラーメンの汁くらい残存していたおっちゃんへの興味を、ためらいなく舐めとる。ぼくの顔から表情という表情が消えた。おかめなっとうちゃんだ。いやおかめなっとうちゃんは笑っている。ならばぼくをラベルに起用したおかめなっとうちゃんはよりシンプルで購買意欲をそそるだろう。時代はシンプルを求めているのだ。おっちゃんからの質問を適当にいなし、今に至る。おっちゃん曰く、このミニバンでの移動は10時間を要するそうだ。おっちゃんから得られた、ただ一つの有益な情報であった。
おっちゃんは小堺一機のようなヘアスタイルでであかーいアロハシャツを着ている。そして骨折にも耐えうる強靭な肉体を兼ね備えている。「ラオスはこれが自由だから大好きなんですよ〜(たばこスパーのジェスチャー)」という発言。おっちゃん、小指がないかもしれない(生憎車内は真っ暗で確認のしようがない)。
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